SEEC系アプリ感想 その2(誰ソ彼ホテル)
プレイ理由やらなんやらは前回の記事↓で書いたので割愛です。
めちゃくちゃ遅くなってしまいましたが、ゆるゆるプレイしていた「誰ソ彼ホテル」の感想です。いろいろ今までのゲームとは違った作品だったので、これはガッツリひとつの記事にしたいと思っていたら、まさかのプレイ開始から半年以上たっていた…。
ネタバレ前提の記事です。また攻略情報は一切ありません。感想のみですのでご了承ください。
全エンディング開放、特別ストーリー課金済み
◆ゲームシステム
大まかなゲームシステムは「アリスの精神裁判」や「監獄少年」と同じ、謎解きパズル+裁判ゲームでした。難易度的には以前の2つとそれほど変わりなく、ラストのホテルから出るときのパズル以外は比較的スムーズに進められたほうだと思います。
問題は課金のバランスですね。今までのゲームに比べてスチルやBGMの開放、放置ゲー要素の追加など非常にコンテンツのボリュームが増えたのですが、その分かなり厳しめの課金システムになってしまったと思います。
スチルのために早期クリアボーナスを狙うと、どうしてもチケットが足りない…。かといって、早期クリアボーナスを諦めるとスチル開放にかなりのコインを要求されるので、どのみち課金必須になってきます。またその放置ゲー要素のマイルームも、主人公のかわいいミニキャラが見られるのは良いのですが、放置ゲーのわりに爽快感はかけらもなく、ただひたすらゴミを駆除させられるだけで全く楽しくないです。
あとストーリー読み返し機能もですが、今までのゲームでは特に制限がなかったのに「誰ソ彼ホテル」は読み返し機能がコイン開放で、それもまたかなりのコインを要求されるので非常に辛いです。こうして半年ちまちまログインし続けて全ストーリーは見れたものの、7章と8章だけ読み返し機能を開放できなかったので、その辺りの別ルートは結局もう一度チケットを使って読みました。 スチルはストーリー内では全て見たものの、ギャラリーで全て開放することはできませんでした。BGMなんて言わずもがなです。
私は中盤で「誰ソ彼ホテルスペシャルセット」という、ある程度のチケットやコインとゲーム難易度を緩和するいくつかのアイテムが入ったセットを買ったのですが、それでもだいぶ厳しかったです。無課金ではもっと厳しいことを考えると、おそらくまともにゲームが進められないレベルなのではないかと思います。
今までSEEC社さんのアプリはどれも、難易度的に課金しなくても問題はなかったのですが、私はいつも楽しませてもらったお礼にいわゆるお礼課金をしていて、今回も最初からその予定だったのに、こんなふうにイライラさせられながら課金させられるとは思ってもいませんでした。最初から課金する気満々だったので、せめてもう少し気持ち良く課金させてほしかったな~というのが本音です。
あとシステム面に関してもうひとつだけ。
重すぎです。
日付が古いスクショですみませんが、今見てもそんなに変わってなかったのでこの画像のままでいきますけど、マジで重すぎ。
私は全然ソシャゲのシステムに詳しくないので、どういうゲームがどういう内部構造でどのくらい容量が重くなるとかはわからないんですけど、それでも52人のアイドルが歌って踊るミリシタとほとんど変わらない数値なのおかしくない?
今までもSEEC社さんのアプリは他のアプリに比べても結構重い印象だったのですが、それでもさすがにここまでではなかった。この容量の問題が、せっかく「誰ソ彼ホテル」のストーリーやキャラを気に入っても、いつまでもスマホに入れておけない大きな要因なので、本当にもったいないなと思います。
◆ストーリー
はっきり言って私はめちゃくちゃ好きです。今までの石倉さんの手掛ける作品の中で一番好きです。と同時に一番人にオススメできないです。何故なら倫理的な部分で胸糞悪い描写が非常に多いのですが、それがゲームの大きなネタバレになるが故に、苦手な人が事前に回避することができないからです。
アプリの説明に特にそういった描写に対する注意書きがあるわけではないし、App Storeの12+も今までのアプリならそれくらいが妥当でしたが、これはちょっと12+ではなくない…?と思うんですよね。かと言ってじゃあ17+かって言われるとそこまでではないので難しいんですが、家庭用ゲームならCERO-Cの15禁くらいかなーと思います。
直接的ではないにしろ、レイプとか四肢切断とかカニバリズムとか殺人&解体とかが描写されているにもかかわらず、完膚なきまでに断罪されているわけではないのが引っかかるんですよね。もちろん気にならない人は気にならないと思いますが、私はちょっとそこまでのグロ描写をする必要があるかな~と、スプラッタとかグロ系が好きだからこそ逆に疑問に感じました。これがまた、全然別の世界の話なら余裕で流せるんですが「誰ソ彼ホテル」の存在自体はファンタジーなのに、そこで生きる人々の設定は完全に現代日本だったので。現代日本の設定で、特殊能力のない普通の人間の連続殺人鬼が一切捕まらないのも、正直ちょっと萎える。
しかしそれらの描写に目をつぶれば「アリスの精神裁判」「四ツ目神」「監獄少年」の3作に比べて今作は非常にエンタメ要素の強い作品だと思います。今までの作品は、例えば「アリスの精神裁判」ならアリスとダーク系の学園ものが好きな人、「四ツ目神」なら和風民俗系ホラー好きな人、「監獄少年」なら大正時代と軍服男子好きな人、というふうにあらかじめ提示された要素に興味がある人だけ楽しめればそれでいいやみたいな雰囲気があったのですが、「誰ソ彼ホテル」にはそれがない。より大衆向けに、どんな人でも楽しめるように意識して作られていると感じました。だからこそ過剰な犯罪グロ描写は人を選んでしまうので、やっぱりもったいなかったな。
あと、今までの作品に比べて非常にキャラの描写に力を入れているように感じました。前回「監獄少年」でキャラの魅力が増したと書きましたが「誰ソ彼ホテル」はそれ以上だったと思います。それこそ二次創作とかの人気、恐らく「誰ソ彼ホテル」が一番高いんじゃないでしょうか。なんというか「このキャラの別の話を読みたい!書きたい!」と思わせてくれる力がある。
ただ、それ故ストーリーのテーマみたいなものは、今までに比べてちょっと薄くなったように感じました。前作3つはやっぱり最初から最後までこういうテーマなんだなというのが一貫してありましたが、「誰ソ彼ホテル」はあまりそういうのは重要視せず、あくまでキャラを掘り下げていったら自然にキャラが動いてできた話みたいな…。今まで石倉さんのゲームをずっと追ってきていた人はこの先「誰ソ彼ホテル」を起点に、それまでの作品が好きだった人と「誰ソ彼ホテル」以降の作品が好きな人に二分化されるのではないでしょうか。
◆キャラ
・塚原音子
かなり好みの分かれる主人公だと思いますが、個人的には超好きです。大好きです。こういう飄々とした掴みどころのない女の子に私はめちゃくちゃ弱いんだ…。
好みが分かれると思うポイントは、女主人公ものにしてはかなり個性的でエキセントリックな見た目と趣味をしていらっしゃるのと、作中で何度も描写されるようにいわゆる善人ではないからですが、私はそこが好きです。思い切りがいいところも好きだし、自分の間違っていたところをきちんと冷静に見れるところも好き。それを踏まえた上で調子に乗っちゃうところも好きです。
ですので、逆に主人公に感情移入して楽しむタイプの方は、こういう主人公はかなりキツイと思います。それも今までの作品はどれも、比較的真面目で優しい善人な、プレイした誰からも嫌われないような主人公だったので、もしかしたら過去作をプレイしてる人ほど受け入れがたいかもしれません。
個性的でエキセントリックな見た目と趣味とはいったものの、こういう青文字系きゃりーぱみゅぱみゅ的な私服も、アイドルオタなところもポリアモリーっぽい考え方も今時の若い子って感じ。全ての要素が塚原音子というキャラにとてもしっくりくるので、キャラデザも設定も非常に考えて作られているんだなあと思います。
だからこそ、オタクによくある「推しにいくら貢いだと思ってるんだー!」的発言だけが個人的には残念です。だって貢いだって言っても、高校生でしかも一切バイト経験がないならそれ全部お小遣い=親の金では?親の金で推しに貢いでイキるオタク……キッツ…。それでもライトな中高生オタクの設定だったら全然構わないし、むしろお小遣いでやり繰りできる範囲で細々と推すリアルさが描写できて共感度増すのに…。オタガチ勢で、それもめちゃくちゃ金銭要求されるアイドルオタの設定にするなら、いっそ大学生くらいでバイト経験あり(ただしホテルのバイトは初めて)くらいの設定だったら良かったのになあ。
・阿鳥遥斗
かなり好きです。あの見た目とおそらく先輩ポジションであることから、プレイする前はもう完全にドS俺様系先輩だ…。「なんでお前はこんなこともできないんだ…」とか「はっ、俺はできるからな。貸してみろ」とか言いつつピンチの時にさり気なく(さり気なくない)助けてくれたりとかしつつ、なんだかんだでイケメン無罪だから許されるような半セクハラレベルの迫り方をしてくるやつだ…(偏見)
と思って身構えてたんですけど、実際は常識人で優しい、真面目天然系だったので好きです。 しかもおそらくこの作品のヒロインや。
超絶イケメンでサックスもできて有能ホテルマンで、本来ならどう考えても鼻につくスペックなんですけど全然気にならないのは、ぐうの根も出ないレベルの聖人なのと、作中でひどい目にあいすぎてるからかな?不幸属性持ちヒロインなんて、正攻法では不幸に巻き込まれすぎてちょっと生き辛い気がするし、確かに音子ちゃんみたいな善にも悪にもなれるようなあくの強いタイプといるほうが良い気がします。私もこの2人の組み合わせはとても好きです。かわいい。特別ストーリーの後日談の2人もめちゃくちゃ良かったです。
・大外聖生
まあここまで順当にきたらそんな感じがすると思うんですけど、全然好きじゃないです。でも嫌いと言い切れるほどでもない。私は主人公の音子ちゃんが好きなので、多分彼女と同じく愛憎渦巻く感じで好きなんだと思います。
やっぱりこの物語には必要な存在だと思うし、音子ちゃんと大外の関係も私はとても好きです。ただ、阿鳥先輩のスペックは鼻につかないけど、大外のスペックは普通に鼻につくんだよなあ…。そのへんは、そういうふうにプレイヤーに思わせたい意図を少し感じるので、製作者さんの思惑通りだとは思うんですけど。
BL苦手というか興味を抱けない人間なので、犯罪描写よりも同性の阿鳥先輩に対するクソデカ感情をどう自分の中で処理しながらストーリーを進めればいいのかわからなかったので、そういう点では多分私は彼のことを半分も理解できていないんだろうなと思います。残念です。
瑪瑙さんと切子さんはあまり本編ではスポットが当たりませんでしたが、特別ストーリー良かったです。悪魔だから人間に対して懇意にはできないけど、主人公に対しては思うところあってちょっと楽しんでるよ~というスタンスが、まさに悪魔らしくていいなと思いました。
ルリさんは典型的なツンデレ女子でかわいいのですが、やっぱり現代日本設定だとあんな幼い子がたったひとりで厨房担当してて豪華なフルコースとか作ったりするのが、なかなか受け入れられませんでした。生前貧乏家庭でネグレクトされていたなら、大人数にお出しできる本格フルコースの料理を学ぶ機会はあったのだろうか…?死んでからこっちで学ぶのもちょっと無理がある気がするし、なんか特別な厨房だったり魔法の調理器具的なものがあれば、納得できたかもしれない。でもこちらも特別ストーリーは本当に良かったです。
支配人もキャラとしては好きなのですが、外見があまりにもUNDERTALEのマスターに酷似していてちょっと…。よくあるデザインですしたまたまだとは思うのですが、プレイしていてどうしても気になってしまう自分が嫌。
◆総評
めちゃくちゃ人を選ぶ、でも私はめちゃくちゃ好きという作品でした。今までの石倉さんの手掛けるゲームって、特別嫌いな人はいなさそうな感じでしたが「誰ソ彼ホテル」は私みたいに好きな人はすごく好きだと思うんですけど、嫌いな人は本当に無理だと思います。
ここにきて一気にスタンスが変わったな~と思っていたら、最後のクレジットと制作秘話を見るに、今回新たにシナリオライターさんが加わった?感じですかね。企画・シナリオはそのライターさんが書いてキャラデザだけ石倉さんが担当した感じなのでしょうか?こういう方向でいくと思っていなかったので、ちょっと予想外です。
また、パズル要素までシナリオ担当さんが作っていたのは、ちょっとびっくりでした。普通にパズル担当の人がいると思ってた…。
うーん私は「誰ソ彼ホテル」が好きなので、今回のシナリオライターさんに対して不満は全く無いのですが、同時に石倉さんのゲームが好きだった身としてはちょっと複雑です。でも今までパズル要素までシナリオ担当が作っていた環境を考えると、そりゃ分業できたらそのほうが良いに決まってるんだよなあ…。
その辺の大幅な改善を受け入れられるかどうかは、個人的には次作の内容によるかなあという感じです。