花色日記

ゲームや女性向けシチュエーションCDの感想ブログ ネタバレ注意です

SEEC系アプリ感想 その1(アリスの精神裁判 四ツ目神 監獄少年)

SEEC社の、特に石倉さんの手がける作品が以前から気になっていたので、これを機会に一気に全部ダウンロードしてプレイしました。「誰ソ彼ホテル」は現在プレイ中なので、終わったら新たに別の記事で書こうと思います。「ネバーランドシンドローム」は乙女ゲーなので、ちょっとシリーズ的に別枠かな~という気がしたので、プレイするかどうかは現在保留中。

全てネタバレありです。また攻略情報は一切ありません。感想のみですのでご了承ください。

 


 

◆アリスの精神裁判

・イラストが非常に好みだったのと、アリスモチーフの作品が好きだったのでプレイしました。昨今アリス×ホラーと言えばもうベタ中のベタという感じですが、あえてその王道を崩すことなく最後まで貫き通していて非常に好感が持てます。

キャラデザやキャラ同士の会話も、いい感じにアリス風味でよかったです。 特に個人的には双子が1番原作のアリスらしい雰囲気で好きです。年齢的にはショタではないのでしょうけれど、こういった人を煙に巻くタイプのいたずらっ子系ショタが、私は大好きなのである。チェシャ猫のキャラデザも、女の子らしいかわいらしさを保ちながらも雰囲気に合っていて非常に好みでした。

 

・いろんなところを調べた際のコメントが細かいところまで凝っていて、ゲームの使用上移動するたびに体力がなくなるのはわかっていても、ついたくさん歩き回ってしまう魅力がありました。世界観がかなり細かいところまで作りこまれているんだなと感じます。

物語の要所要所で病んでしまったうさぎが突然登場する系のホラー要素は、歪みの国のアリスを彷彿とさせますね。白うさぎの設定も少し似てるかな。こちらはプレイしたのは十年くらい前なのですが、あの白うさぎのホラー感は今でも記憶に残っています。

 

・ゲームのシステムは典型的な逆転裁判系ですね。これは昔、逆裁をプレイした時もそうだったのですが、トリックの難易度が低めに設定されてるせいで結構早い段階で誰が犯人なのかとか、どの証拠が怪しいとかがある程度わかってしまうんです。が、 大きな答えはわかるけど、そこに行き着くまでに提示する細かい情報がどれかわからない。という現状にたびたび悩まされました。

一度「こいつのここがおかしい!犯人や!」と最終地点が目に入ってしまうと、それに気をとられて余計に段階を踏めなくなってしまう…。そういう意味では比較的やり応えのある難易度でした。

 

・エンディングについて

あれだけの裁判を起こして自分の罪を自分自身で裁くことがテーマだったにしては、正直あっさりした終わり方だったと思います。 アリスの罪に対して、自分で自分を責めること以外の罰がなかったので、結局なんだかんだで新しい友達とそれなりに仲良くやってる感じに見えてしまって、ちょっともったいないなと感じました。

例えば「あれから警察に全てを話したアリスは、自分に対してあらぬ噂も立てられたけど、いつしかみんなの記憶から事件のことは忘れ去られていった…」的なところからエンディングのチェシャ猫とのやりとりに入ったら、最後のアリスの決意と相まって受ける雰囲気が全然違ったのにな~と思うんですよね。

 

・うーん…あとこれは書くか少し悩んだので後で消すかもしれませんが、私はこの作品に限らず「いじめられてる友達を何もできずに見捨ててしまって後悔している系主人公」の設定があんまり好きではないんですよね。これは本当に個人的な問題です。

いじめはいじめてる側だけじゃなく、見て見ぬ振りをした人間も裁かれるべきなのかどうか、といった難しい理由ではありません。

単純にこの手の設定の主人公が増えすぎて食傷気味なのと、いじめを行っていた側を主人公にするとよっぽどうまく描写しないと批判を受けてしまう…かと言っていじめられていた側ほど重い設定も難しい…でも心に少し何かを抱えた主人公にしたい!みたいな時に、安易に使われる都合の良さを感じて苦手なんです。この設定を使うと、いじめられていた友人との和解イベントや、いじめていた側に立ち向かっていく主人公の成長イベント、両方書けるぜラッキーみたいな。いやもう、とんでもなひねくれた見方なのは自分でも重々承知しているのですが…。

この作品のアリスは、本当にそのテーマが物語の肝だったので安易に使われたわけではないのはわかっているのですが、わくわくしながらプレイを進めていって物語の全貌がわかってきた時に、あーこれ系か…とちょっとがっかりしてしまったのが正直な感想です。

  アリスの精神裁判

アリスの精神裁判
開発元:SEEC Inc.
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◆四ツ目神 全エンディング、全カード習得 特別ストーリー課金済み

・アリスの精神裁判とは違ってひたすら脱出ゲーム。 普段脱出ゲームをプレイすることが少ないのと、謎解き要素はゲーム内のヒントだけでは解けないような、ひらめきが必要なものもあって結構難しかったです。私には広告視聴からの攻略サイト必須でした。

 

・キャラのイラストが相変わらず綺麗でかわいいです。特に私はキャラの見た目が少し実年齢より幼い絵柄が好きなので、石倉さんの絵はかなり好みど真ん中です。前回のアリスの精神裁判が洋風ホラー×学園×友達の話だったのに対して、今回は和風ホラー×神社×家族とガラッとテイストが変わっているにもかかわらず、特に違和感を感じさせないところは引き出しの多さを感じました。

 

・エンディングはバッドエンドからトゥルーエンドに至るまでどれも非常に好きです。バッドエンドは大体の民俗系ホラーのよくある言いつけを守らない、タブーを犯してしまったが故のバッド展開の基本をきっちり押さえていて気持ちがいいです。バッドなのに。

またホラーゲーム特有の「ハッピーエンドでも全ての人が幸せになれるわけではない」というちょっとビターなエンドが、これまたどのハッピーエンドでもきちんと描写されています。叔父さんエンドだと主人公の他の家族は亡くなったままですし、逆に本当の家族エンドだと叔父さんとは家族になれない。

個人的には叔父さんとの家族エンドが好きですが、そう言えばアリスのほうの感想も一緒に書いていて、ふと歪アリにもこんなやさぐれた叔父さんいた上に叔父さんエンドもあったなあと思い出しました。当時かなり影響のあった携帯ホラーゲームだったので、ここまでくるともしかしたら製作者さんもある程度ご存知だったりするのかもしれませんね。

 

・こういう和風というか民族系ホラー慣れしてると、ちょっと話の全体像がわかりやす過ぎるかなーと感じます。

アリスの時よりもシナリオが倍以上増えているのに、最初の物語の全体像がわからないままプレイしていたアリスに比べて、こちらは三分の一くらいプレイした時点で本来の神社の役割とか主人公と登場人物の関係とか、話の大まかな流れがある程度予想できてしまいました。 特に「イミゴ」という名前はあまりにもわかりやす過ぎて、彼が名乗った瞬間もう双子の忌み子系の話ってわかってしまうのがもったいなかったです。

と思っていたら、製作者さんも名前のわかりやすさについてはだいぶ危惧されていたようで…。うーん、やっぱりスマホゲームという時点で、コンシューマーゲームをプレイする層よりも更にライトな層をターゲットにしないといけないのだとは思いますが…。忌み子物って有名どころだと、少し古いですがひぐらしとかでも結構詳しく取り扱われていたような覚えがあるし、他の部分が全体的にかなり良かったせいもあって、やっぱりちょっともったいないという印象が残りました。

 

・逆に全く予想できなかったのはラスボスです。ラスボスはもう絶対次男だろうと思っていたし、実際なんらかの制裁はあるのではと思っていたのでびっくりしました。でも追加ストーリーを見ると、むしろこのままゆるやかな終焉を迎えるほうがひと思いに消えることのできたラスボスよりキツイかもなあと思います。

個人的にはラスボスが消えて、クロくんとシロちゃんも消えたのかが少し気になります。多分神社自体が消えたので一緒に消えたんだろうなとは思いますが…子供だったのもあってちょっと救われるところが見たかったのはあります。 

 

四ツ目神 【謎解きノベル×脱出ゲーム】
 
四ツ目神 【謎解きノベル×脱出ゲーム】
開発元:SEEC Inc.
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◆監獄少年 全エンディング、全カード習得 特別ストーリー課金済み

・ひたすら脱出ゲームだった前作「四ツ目神」からうって変わって、今度はまた「アリスの精神裁判」のような脱出ゲーム+裁判ゲームに戻りました。私はやっぱり脱出ゲーム一辺倒よりもこれくらいのバランスが好きです。謎解き要素も、そろそろ私がこういうタイプのゲームに慣れてきたのもあるのかもしれませんが、比較的詰まるところが少なくなり難易度的にもスムーズに進められました。

ストーリーの進めやすさや課金要素も、今までで一番納得できるバランスだったと思います。むしろ今までがちょっと良心的すぎたと思うので…。またプレイし終わったらこちらもまとめますが、次作の「誰ソ彼ホテル」は正直かなり厳しい課金バランスなので、総合すると「監獄少年」のシステムが一番良かったな~と思います。

 

・やっぱりキャラのイラストが安定していて美しいです。そして相変わらずかわいい。

ただ題材に関しては本当に私の好みの問題で申し訳ありませんが、メインの舞台が男性寮的な場所になるとBL要素がうっすらと出てくる可能性が、今までの経験上非常に高いので、BLだけは唯一苦手な自分にはちょっと厳しいかもしれない…と覚悟していました。

実際は、もちろん大っぴらにそんな要素はなかったのですが(そういうゲームじゃないので当たり前)今考えると軽いブロマンスではあったかもしれません。序盤はやっぱり男の子同士のやりとりにあまり興味が持てず、プレイにも時間がかかっていました。

 

・…が、3章辺りから急激に面白くなってきてびっくりしました。もう「BLだったらどうしよ~」とかそんな気持ちは全部どうでもよくなっていて、素直にストーリーにのめり込むほど面白かったです。前2作に比べるとかなりハードな設定だったのも、好みだったのかもしれません。その設定も、当時の文化についてとても詳しく調べて作られていたと思います。

だからこそ、ここまで時代背景について徹底して練られたストーリーなのに、たびたびどう考えても現代っぽい単語が入ってくるのが気になりました。特に「バディ」

私は歴史も言語についても全く詳しくないので迂闊なことは言えないのですが、「バディ」って単語はそんな大正時代からすでに使われていたのかな…?軍でそういうシステム自体はあったのかもしれないけど、普通に「相棒」とかせめて「コンビ」とかで良かったんじゃないかなと思うんですけど、でもこのあたり本当に詳しくないのであまり言及するのはやめときます。

ただ「バディ」以外にもえっ?と引っかかる言葉はいくつかありました。本当にちゃんと当時の言葉を使用している場面(しかも丁寧な解説付き)が多かった分、余計に気になるしちょっともったいないなという感じでした。

あっ、脱出ゲームで使用するアイテムとかパズルが現代すぎるとかはさすがにツッコミません。いくらなんでもそこまで当時の文化に合わせるのは大変すぎるし、パズルに当時の知識が必要になると難易度も激上がりするし、しゃーない。

 

・エンディングはトゥルーエンドでもかなり切ない感じ。これは時代背景的に覚悟していたので仕方がないものの、やっぱりちょっとプレイし終わって物悲しい気持ちにはなりました。でも本当に美しいラストだと思います。

バッドエンドも、どれも本来のエンドに少しずつかみ合っている感じが良いのですが、唯一ふたつくらいあった充先輩に殺されるエンドだけが私の中で謎のままです。この人そんなに病んでたっけ?他にヤバイ人がいくらでもいるのであまり怪しいとも思わず、初っぱなから信頼maxで進めていた自分にとっては、バッド回収した時になぜ殺されるのかよくわからなかった。

だってこういう飄々とした不真面目女好き遊び人を装ってるタイプって、最終的に絶対主人公たちの世話焼き保護者ポジションに落ち着くもん。知ってる。

 

・ただキャラの話をするなら、どうしても草間さんだけはいくらなんでも…いくらなんでもかわいそうすぎる…!この人やっとメインで出てきたと思ったら一瞬で死んでしまった。あんまりだ。

…と思っていたら個別ストーリーで生きてたーーー!良かったーーー!容姿は草間さんが一番好きなので素直に嬉しかったです。いつも困った顔しててかわいそかわいかった。

逆に最初は全然好みじゃなかったし、普段もこういうタイプにハマることは少ないものの、大和は自分でも思いもよらず好きになってしまいました。ストーリーの後半からが本当かわいいんだよなあ。 

 

 謎解きノベル×脱出ゲーム 監獄少年

 謎解きノベル×脱出ゲーム 監獄少年
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◆総評

ここまで3作プレイして感じたのは、石倉さんのゲームはとにかくストーリーとイラストが非常に安定しているということです。どの作品もプレイして良かったと思います。それもシリーズを追うごとに、いいところはそのままに新しい要素をどんどん取り入れてよりパワーアップしたゲームになっているのが素晴らしいです。

特に「四ツ目神」と「アリスの精神裁判」では、キャラについてそこまで深く語ろうとは思いませんでしたが、「監獄少年」はキャラの魅力が急激にぐっと増したように感じました。ただ、キャラの大まかな設定自体は、既に前2作からも十分魅力的で引きつけられる要素があったと思います。ポテンシャルとしてはそれこそ二次創作界隈での人気がもっと出てもおかしくないレベルでした。

にもかかわらず「監獄少年」に比べると少し弱い気がしたのは、製作側が次作に向けて努力した結果ももちろんあるとは思いますが、一番は容量の問題だったのではないでしょうか。

「監獄少年」は前2作に比べストーリーのボリュームが圧倒的に増えた分、キャラの描写もより深いところまでできるようになったのだとしたら、はっきり言って前2作がもったいないです。非常に実力のある方だと思うので、容量の問題で長い話や凝ったゲームにはできず、しかも至るところで課金要素を無理にでも入れなければならないスマホゲームでは正直役不足なのでは…。

大げさかもしれませんが、ここまでのキャラ、ストーリー、イラストを生み出せる方ならスマホーゲーム以外のメディアで作品を追いたい気持ちが大きいです。私はこの方の書くもっと長い物語が見てみたい。

いやそんな簡単な話じゃないし、勝手過ぎるファンのぼやきなのは本当に承知していますが、例えばもしも石倉さんがこれから先いきなり作品の場を同人ゲームやコンシューマーゲームなどの、手軽に遊べない場所に移されたとしても、私は構わず応援し続けたいです。